ユタ州南部の砂漠地帯でよく見かける、岩の表面についたカラフルなコケのような物体。何だろうと疑問に思ったことはありませんか?
実はこれ、Lichen (地衣類)というもので、植物でも動物でもないちょっと不思議な生き物なんです。
地衣類ってどんなもの?
地衣類は岩、樹皮、土の表面、家の屋根など、様々な場所で生きています。世界には約4万種の地衣類が生息しているそう。
地衣類は、Fungi(菌類)と Algae(緑藻やシアノバクテリアなどの藻類)というふたつの生物の共生体。菌類は外気から身を守り、土や岩から栄養分を抽出し、雨や霧などから水分を吸収する働きをします。一方で、藻類は光合成をして炭水化物を合成するという役目を果たします。ふたつの生物が共生することによって、どちらか一つよりもより丈夫な生命体として存在しているのです。
地衣類は1年に1ミリ以下しか成長しないのですが、数千年も生きるんだとか。砂漠や北極など過酷な気候条件でも生き続けられます。干ばつの時期には休眠を取り、雨が降って水分を得ると息を吹き返すので、砂漠のような雨の少ない環境でも生きることができます。
地衣類の構造
地衣類は植物と違って、葉・茎・根などの区別がありません。コケ類と姿はとても似ているのですが、植物の祖先であるコケ類とは全く異なります。
コケ類は葉・茎・根に似た機能がある植物のような構造で、体全体に葉緑体を持ち光合成をします。しかし地衣類は表面の藻類の部分だけでしか光合成ができません。
地衣類のクローズアップ。きゃ~
地衣類の種類
代表的な3つの種類は、
- Crustose Lichens(痂状地衣類) – 岩や土壌の上に平たくしっかりくっついたもの。ユタ州の国立公園などでよく見かけるのはこれ。
- Foliose Lichens(葉状地衣類)- レタスのようにひらひらとした葉状のもの。
- Fructose Lichens(樹状地衣類) – 細い枝状で、基質から立ち上がったり垂れさがったりするもの。
地衣類の色
明るいオレンジや黄、緑、白、黒、などとってもカラフルですよね。
色は、含水量、年齢、光の量、何の表面に生えているかなどによって決まってくるそう。
これすごいでしょ。真ん丸に育った Lichen さん。もはやアートです!
地衣類は生態系に欠かすことのできないもの
地衣類は生態系にとても重要な役割を果たしています。
維管束植物の成長を助け、土壌に有機物を供給します。また鳥や動物にとっては食物であり、巣を作るための材料にもなります。保護色として、周囲にある地衣類の色や形に似せたボディを持つ昆虫もいます。私たちの生活の中でも、染料や香料、食用として使われることもあるそう。
また、地域の環境のバイオモニターでもあります。地衣類は汚染物質を含む空気中のすべてを吸収するので、空気の悪い所では生きられません。なので大気や生態系の微妙な変化を知るための指標となるのです。
う~ん、Lichen(地衣類)てかなり興味深い生き物ですね!今後は岩や木にぺた~っとへばり付いている彼らを見る目が少し変わってきそう…。これからはもっと注意深く観察して、いろんな種類の Lichen さんを見つけてみたいな~と思いました。
参考
- https://www.fs.fed.us/wildflowers/beauty/lichens/index.shtml
- https://www.nps.gov/articles/seug-lichens.htm
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